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PHASE 6 「統べる者/前編」
「ねえ、ギドォ。何処に行くの?」
「サキ、うるさいぞ。文句言うならカケルたちと一緒にいれば良かっただろ」
文句を言いながら歩くサキに、ギドは振り向きもせずそう言い返した。サキは、一緒に歩くルウに救いを求めるような顔を向ける。
「もうシュールを出てから2日目だよ。どこか街に行かないとお腹すいちゃったよ」
サキはふくれ面でギドにそう反論したものの、ギドは意に介した様子もなく先頭を歩き続けていた。
「カケルさんたちは、やっぱりシュールに残ったのかな・・・」
サキは、ギドに聞こえないように小声でルウにそう呟いた。実際はギドにもその言葉は聞こえていたが、ギドは聞いていないふりをしてそのまま先頭を歩き続けていた。
ギドたちも、カケルたちと別れてからまずシュールの街に向かった。何も手がかりのないことにはどうしようもなかったし、まずは食料なども確保しておく必要があった。しかし、街に着いた次の日には富野間の演説があり、ギドたちは充分な準備もしないままその日の内にシュールを出発したのだった。
ギドは、実際のところ彼のやり方が合っているか間違っているかなどどうでも良かった。誰もが自由に自分の道を決める権利がある。富野間が、彼自身があの街で権力を振りかざそうとも、彼にはその権利があると思っていたし、ギドには関係なかった。ただ、富野間の提案は、ギドにとっては到底受け入れられるものではなかっただけのことだった。
それと同じように、カケルたちがあの街に残ろうと残るまいと俺には関係ない――ギドは心の中でそう呟いていた。
「ギド、これからどうするつもりですか?」
ルウがそう尋ねると、ギドはようやく立ち止まり振り返った。
「とりあえず、地図に載っている聖者の祠に行く」
「そこに行けば食堂があるのぉ?」
サキが嬉しそうにそう尋ねると、ギドは「あるわけないだろ」と睨むようにして言い返した。サキは、泣きべそをかくようにルウの後ろに隠れ、何か不満そうにぶつぶつと口ずさんでいた。
「聖者の祠に行ってどうするんです?」
ルウが再び歩き出そうとするギドにそう尋ねた。
「出口はある。絶対にな。勝利したものだけが通ることのできる出口がな」
ギドはそう言って再び歩き出した。
「・・・確かにその通りです」
ルウはそう答えると、ギドのあとに続いて歩き出した。
「どういうこと?」
サキはルウと並んで歩きながら小声でそうルウに尋ねた。
「我々の知っている出口は今のところ2つだけです。僕らが降りてきたエレベータと、グランドキーパーたちの隠れ施設の非常階段。確かに出口がそれだけしかないということはあり得ません。少なくともあと一つはあるはずです」
「あと一つって?」
サキは不思議そうにそう尋ねた。
「オフライン・ゲームをクリアした奴はどこから出るんだ?オフライン・ゲームをクリアした奴らが、あのエレベータやグランドキーパー施設の非常階段から出るとは考えられない。なら、ゲームをクリアした人間だけが辿り着ける、秘密の出口が必ずあるはずってことだ」
ギドが振り返り、ルウの代わりにそう答えた。
「ふーん。・・・え!?じゃあ、オフライン・ゲームをクリアしようって言うわけ!?」
サキが寝耳に水といった顔でそう叫んだ。
「そうだ。それが一番手っ取り早いだろ?」
ギドは笑みを浮かべてそう答えた。
「ここが聖者の祠だ」
ギドたちの前には高い岩壁がそびえ立ち、目の前には大きな扉が立ちふさがっていた。
「なんか見るからに怪しい雰囲気よね。祠って感じじゃないわ」
サキが神妙な顔つきでそう答える。
「どんなに良くできていようと、結局は単なるゲームだ。入るぞ」
ギドはぶっきらぼうにそう言って中に入っていく。ルウとサキも追いかけるようにギドに続いて中に入った。
祠の中は思ったよりも狭く、簡単な祭壇といくつかの銅像が立っているだけだった。他の部屋に続きそうな扉らしいものもなく、別段変わったところはなさそうに見えた。中央には聖母をかたどったような銅像が立ち、その銅像を囲むように部屋の四方に杖を持った銅像が立っていた。
「ねえ、ここに何があるの?」
サキが周りを恐る恐る見まわしながらそう言った。
「それを見つけるのが俺たちの仕事だ」
そう言いながら、ギドとルウは祠の中を調べ始めた。サキは、やる気がなさそうに歩き回るギドとルウを祭壇の前で眺めていた。
「突っ立ってないでお前も探せ」
ギドがサキにそう言葉をかけると、サキは渋々と身近なものを調べ始めた。
三人はしばらく祠の中を調べてみたものの、手がかりになりそうなものは一向に見つかる気配はなかった。サキは真っ先に諦めて、祭壇の前に座り込んで探し回るギドとルウを見つめていた。
「ねえ、ギドォ」
サキが退屈そうにそう声を掛けると、「手伝う気がないならせめて黙ってろ」とギドは不機嫌そうに怒鳴り返した。サキは、仕方なく黙り込んで寝ころぶように祭壇にもたれ掛かったまま、部屋を見まわしていた。
祠の中は、すでに何年も人が足を踏み入れてないかのように空気が淀んでいる感じがした。実際、ギドやルウが動き回るたびに砂埃が部屋の中に舞い上がっていた。砂埃が舞い上がるたびに、天井からの光が淀んだ空気の中に不可思議な模様を作り出していた。
「ねぇ、ギドォ」
ふと違和感を覚えたサキは、もう一度ギドに声を掛けた。ギドは怒った顔をサキに向ける。
「怒らないでよ!ちょっとさあ、あの天窓がおかしいかなって言おうとしただけじゃない」
サキがふくれ面でそう答える。ギドとルウは、その言葉を聞いて天井を見上げた。
「ここ、岩壁の中じゃなかったっけ?なんで天井から明かりが射すのかしら」
サキが不思議そうにそう言うと、ギドは考えるようにじっと天井を見つめていた。
「それにそこの銅像、砂埃が舞うと微妙に模様が変わるのよね。なんでだろ?」
「それだ!でかしたぞ、サキ!」
ギドはそう叫ぶと、中央の銅像に近寄りその頭の上に手をかざした。ギドの手が天井からの光を遮ると、中央の銅像の胸に、ギドの手の形に合わせて穴が開いた。
「転写映像だ。砂埃が転写映像の光を遮ったせいで、微妙に模様が変わったように見えたんだな」
ギドはそう言い、天井からの光をすべて遮るように影を作った。すると、銅像の姿は消え失せ、その床に両開きの扉が姿を現した。
「これが入り口ですね。大手柄ですよ、サキ」
ルウが扉を見てそう言った。
「え?そう?ありがとう、ルウくん!何かルウくんに褒められると照れちゃうな。誰かさんと違って言葉に重みがあるよねぇ」
サキは横目でギドを見ながら、得意そうな笑顔でそう言った。
「まあ、サキにしては上出来だったな。そんなことより、中に入るぞ!」
ギドはバツが悪そうにそう言うと、勢いよく扉を開けて中を覗き込み、そのまま身体を床の中に忍び込ませるようにして入っていった。
ルウとサキは顔を見合わせて苦笑いをしてから、ギドのあとを追うように扉の中に入った。扉の中には、階段がかなり深く続いているようだった。
「これから先はモーヴの出る確率が大きいな。サキはちゃんと俺の後ろにひっついてろ。ルウは後ろを気をつけてくれ」
ギドのその言葉に従い、三人はかたまるようにして階段を進んだ。しばらく階段を下りると、いくらか広い回廊に出た。
回廊の両脇に扉が続いていた。一番奥には人一倍大きい扉が見えた。
「なんだ。どこにもモーヴなんていないじゃない」
サキはそう言うと、ギドの背後を離れて回廊を眺めて歩いた。
「確かに、それらしい気配は感じられませんね」
ルウも警戒を解いたように、サキに続いて回廊を眺めながら奥に向かって歩き出した。
「油断はするなよ」
ギドの言葉に、ルウとサキは合図を送るように返事をすると、思い思いに回廊を見て回っていた。
「一番奥の扉は開きませんね。鍵がかかってるみたいです」
回廊の奥からそう伝えるルウの声が聞こえた。サキは、その声を聞いてから、目の前にある扉の一つに手をかけ、ゆっくりと開けた。
「ここは開いたわよ」
サキはそう言いながら、扉から中を覗き込んだ。薄暗い部屋の中はこれといって何もなかったが、奥に一つだけ机があり、小さな箱が置かれているのがぼんやりと見えた。
「何かあるわ」
サキがそう言って部屋に足を踏み入れようとした瞬間、部屋の扉さえも砕くような勢いで、大きな剣がサキの上に振りかざされた。しかし、ギドが素早くサキの腕を引き寄せ、プロテクトの呪文を唱え杖一つで巨大な剣を受け止めていた。
「油断するなと言っただろう」
ギドはそう言いながら再び呪文を唱えると、氷の矢が暗闇の中に潜むモーヴの身体に突き刺さった。モーヴの身体がよろけるのを見ると、ギドはサキの身体を支えながら扉から一度離れ、杖を身構えた。サキも体制を整えると背中の剣を抜き身構えた。
ギドとサキが睨み付けるように扉をじっと見つめていると、そこから巨大な騎士の姿をしたモーヴがゆっくりと姿を現した。ただし、腰から下は蜘蛛のような身体をしていて、忙しそうに動き回るたくさんの足が妙に生々しく見えた。
「趣味悪い・・・」
サキは小声でそう呟く。
「ダークランダーだ。ボスモーヴだな」
「大丈夫ですか?」
ルウがそばに駆けつけてそう言うと、同じようにダークランダーに向かって身構えた。
「一気に片を付けるぞ!」
ギドはそう叫ぶと同時に、呪文を唱えた。すると、ギドの手の中に巨大なカマが現れた。彼がそれをダークランダーに向かって振り下ろすと、空気を裂くようにして光の筋がダークランダーに突き刺さった。ダークランダーはギドの攻撃によろけながらも、咆哮をあげ、ギドに向かってじりじりと近づいてきた。
ギドの攻撃に合わせるように、サキはすでにダークランダーの背後に回り込んでいた。サキは素早くダークランダーに忍び寄ると、背後からダークランダーの足にめがけて剣を走らせた。サキの剣は、ダークランダーの足を正確に捉え、数本の足を失ったダークランダーはその場によろけるように倒れた。
次の瞬間、ルウの身体から大きな翼を持った精霊が姿を現していた。精霊はルウの言葉に従い鋭い叫び声を上げると、数百、数千とも知れない光の矢がダークランダー目掛けて突き刺さった。ダークランダーは、再び咆哮をあげながらも、よろけながら立ち上がった。
ギドはすでに目を瞑って次の呪文を唱え始めていた。立ち上がったダークランダーは、よろけながらもギドに目掛けて剣を振り下ろした。
「ギド!」
サキは素早くギドの前に立ちふさがり、その剣をかろうじて受け止めた。剣に大きな力がのし掛かるのを感じながらも、サキは何とかダークランダーの剣を跳ね返した。
次の瞬間、ギドの口から最後の言葉が発せられると共に、ギドの手のひらから黒い矢がダークランダーに向かって飛んだ。黒い矢はダークランダーの喉を捉えると、掻き消すかのようにあっという間にダークランダーの身体を呑み込んでしまった。黒い矢がそのまま消え去ると、そこには何事もなかったかのような静寂が訪れていた。
「まあ、こんなもんだな」
ギドが得意そうにそう言うと、サキとルウは緊張を解かれたように肩をなで下ろし武器を収めた。
「わたしがいなきゃ危なかったくせに」
サキが納得できないようにそう言い、ふくれ面をギドに向けた。
「それも計算ずくだ」
ギドはわざと素っ気なくそう答えると、ダークランダーが出てきた部屋に入り、サキが見つけた箱を持って出てきた。箱を開けると、大きな鍵が入っていた。
「これが奥の扉の鍵だな」
ギドはそう言うと、一番奥の扉に向かって歩き出した。
「他の部屋は調べなくて良いの?」
サキがギドのあとを追いながらそう尋ねる。
「奥の部屋を調べて駄目なら、そのとき改めて調べさせてもらうさ」
ギドはそう言うと、奥の扉の前に立ち躊躇なく鍵を差し込み、ゆっくりと回してみた。鍵は、スムーズにくるりと一回転して元の場所に戻った。カチッと、鍵が開く音が回廊に鳴り響いた。
ギドはゆっくりと扉を開け中に入った。サキはギドに続いて部屋の中に入ると、思わずため息をついて部屋を見まわしていた。部屋の中は、煌びやか装飾が施され、部屋の中央には場違いなほどに大きなベッドが置かれていた。ギドは見まわしながら、ゆっくりと部屋の中を進んだ。
「おいでなすった」
ギドが部屋の中程まで進んだとき、不意に立ち止まりそう呟いた。ギドの視線の先には、部屋には不釣り合いなほど質素な鏡台が置かれ、その前には少女が一人座っていた。
少女はギドの声に気がつくと、ゆっくりと振り向き、ギドたちを見た。
「待っていましたよ、ギド」
少女はゆっくりした口調でそう告げた。
「これは驚いたな。俺はあんたを知らないがあんたは俺を知ってるわけだ」
「3D映像でしょうか?」
ルウがまじまじと見つめながらそう小声でギドに呟いた。
「本物に見えるけど・・・」
サキも警戒した様子で観察しながらそう呟いた。
「・・・で、あんたは何者なんだ?何で俺のことを知ってる?」
ギドは真顔でそう尋ねた。
「わたしは本物ですよ。このオフライン・ゲームの一部ではありますけど」
少女は先に、サキを見ながらそう答えた。サキは、驚いたように頷くしかなかった。
「わたしはリナと言います。あなたたちのことは、この鏡を通して見ていました」
リナはギドの方に向き直ると、改めてそう答えた。
「あんたは自分をオフライン・ゲームの一部だと言ったな。それは、ストーリーに欠かせない重要人物ってことだな。あんたはその役割を与えられた役者みたいなもんてことだ。それであってるかな?」
「そんなところです」
リナはそう答えた。
「よし、わかった。それで、俺たちはあんたをどうすればいいんだ?」
「わたしをここから助け出してください。そしてわたしをある街に連れて行って欲しいんです」
「ある街って?」
「ブルシェアという街です」
「あんたをその街に連れて行けばいいんだな。よし、分かった」
ギドは頷くとリナに近づきその手を取った。ギドはそのまま彼女の前に跪き、リナの顔を見上げて言った。
「俺はあんたをブルシェアに連れて行く。お姫様さん。こんな感じで良いかな?」
「ええ」
リナはおかしそうに笑いながらそう頷いて見せた。
ギドはそのままリナの手を取って部屋の扉へとエスコートするように歩いた。サキはその姿をふくれ面で眺めていた。
4人が部屋を出ると、リナはギドから鍵を受け取り鍵を閉めた。鍵が閉まる音が回廊に響き渡ると、リナはその音を聞いてひとつ大きなため息をついて、「行きましょう」と言って再び歩き出した。
「そのブルシェアって街は何処にあるんだ?」
祠を出たところでギドはリナにそう尋ねた。
「わたしが道案内しましょう。街までの方角は大体分かります」
リナは躊躇なく歩きながらそう答えた。
「ブルシェアという街に何があるんですか?」
警戒するような眼差しで、ギドたちの後ろを歩いていたルウがリナにそう尋ねた。
「それは今は言えません」
「それはゲームの規定上、今は言えないと言うことでしょうか?」
「そうとってもらって構いません」
ルウはしばらく考えてから再び口を開いた。
「正直、今はゲームを続けるという状況ではなくなっています。僕らはこの会場に閉じこめられているんです。それでも、あなたはゲーム上の役割を続けようと言うことですか?」
「それはわかっています。でも、どうしてもブルシェアに行く必要があるんです」
「わかった。俺たちはこれ以上詮索はしない。あんたはあんたの役割をこなしてくれればそれでいい」
ギドはそう言うと会話を打ち切るように前を向いて歩き出した。ルウもその言葉に従うように、それ以上リナに話しかけることなく、4人はしばらく黙ったまま黙々と歩いていた。
「ねえ、ブルシェアってところに向かうのは良いんだけどさぁ・・・そこ遠いの?いい加減、お腹すいたんだけど・・・」
沈黙に耐えかねたサキが控えめな声でそう呟き、ギドの反応を神妙な趣で見つめていた。しかし、サキはギドが黙ったまま振り向きもせず歩き続けているのを見ると、舌打ちしながら黙ってまた歩き出した。
「ねえ、ルウ。ギド、おかしくない?あんな女の言うこと信じちゃってさ」
サキはルウと並んで歩きながら、そう呟くように言った。
「確かにギドらしくないですね」
「ね?そう思うでしょ?」
「一目惚れってやつですよ、きっと。ギドも人の子ですから」
ルウは微かに笑みを浮かべながら、なまじ冗談でもなさそうな口調でそうサキに耳打ちした。
「冗談きついな、ルウくん」
サキは苦笑いを浮かべながらそう呟き、そっぽを向くように森の方に目を向けた。
サキは森を眺めていると、ふと草むらが揺れ動くのを感じた。そして、次の瞬間、弓矢がサキに目掛けて飛んできた。しかし、素早くその気配を察知していたのか、ルウがサキの前に立ちはだかり、飛んできた弓矢を間一髪で払いのけた。
「モーヴ?」
サキがそう言いながら草むらを見ていると、そこから数人の男が姿を現した。男たちは、弓矢を構えながらじりじりとギドたちに詰め寄ってきていた。
「そうは見えないな」
サキの問いにギドはそう答えながら、男たちが歩み寄ってくるのを憮然とした態度で待った。
「何の用だ?」
ギドがそう叫ぶと、男たちはその場で足を止めて睨み返してきた。
「ここはナイジェル様の領土だ。通りたかったらギルを払いな」
先頭に立つリーダーらしき男は含み笑いを浮かべながらそう答えた。
「ナイジェル?あのヤロウもオフライン・ゲームに参加してたのか」
ギドが吐き捨てるようにそう呟く。
「それって通行料ってこと?なにそれ?」
サキは不満そうな口調で男にそう言い返した。
「文句言わずにギルを払えばそれでいいだよ!」
男は苛々した素振りでギドたちにそう言い放った。
「嫌だね」
ギドはそう答えると、男に再び含み笑いを浮かべて見せた。そして、間髪入れずに男の脇腹に杖を突き刺した。男は苦しそうな嗚咽を吐きながら、その場に崩れ落ちた。
「この野郎!」
男がギドを見上げながらそう叫ぶと、他の男たちが構えていた弓から一斉に矢が放たれた。しかし、矢はギドの目の前で空中に浮いていたまま止まった。ギドの目の前には、すでにルウが作り出した結界が張られていた。ギドはゆっくりとその矢を一本一本掴むとへし折って床に放り投げた。
「サキ」
ギドがそう言うと同時に、サキは剣を抜き男たちを素早く切り裂いた。男がよろめいた瞬間、ギドがすばやく呪文を唱えた。男たちの上に死に神の姿が現れると、男たちはその場に蹲るように倒れた。
「さあ、どうする?」
ギドは未だに腹を苦しそうに抱えて倒れている男の前に膝をつき、男の顔を覗き込みながらそう言った。
「今回は見逃してやる。その代わりナイジェルのヤロウに伝えておけ。いつかの借りは返しに行かせてもらうってな」
ギドはそう言うと立ち上がり、よろめきながら立ち上がる男たちを見て言った。
「呪いの呪文は時間がたてば効果が薄れてくるから心配するな。早く逃げないと、本当に死に神に取り憑かれるぞ」
ギドがそう告げると、男たちはよろめきながらも足早に逃げていった。
「この先にはリーンという街があります。彼らはそこを拠点に行動しているようですね」
ルウが逃げていく男たちを見ながらそう言った。
「お姫様さん、悪いが予定変更だ。ブルシェアに行く前に、リーンに行く」
ギドはそう言い、歩き出した。
「ええ、行く先を決めるのはあなた自身ですから」
リナはそう答えると、ギドのあとについて歩き出した。
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